非課税投資 最大活用術

企業型DC加入者が知るべき iDeCo・つみたてNISA非課税枠の最大活用術

Tags: 企業型DC, iDeCo, つみたてNISA, 新NISA, 非課税枠活用, 資産形成, ポートフォリオ, 税制優遇

はじめに:企業型DC加入者でも非課税枠をフル活用できるか

企業にお勤めのビジネスパーソンの中には、企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入されている方も多いかと存じます。企業型DCは、事業主掛金によって将来の資産形成が可能となる大変有用な制度です。しかし、「企業型DCに加入しているから、iDeCoやつみたてNISAの非課税投資枠はあまり使えないのではないか」あるいは「どのように組み合わせれば良いか分からない」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、企業型DCに加入している場合、iDeCoの拠出限度額には制約があります。しかし、その制約を正しく理解し、iDeCoとつみたてNISA(そして新しいNISA)を戦略的に組み合わせることで、非課税投資枠を最大限に活かし、将来に向けた効率的な資産形成を進めることは十分に可能です。

本稿では、企業型DC加入者の方々が、iDeCoおよびつみたてNISA(新NISAのつみたて投資枠・成長投資枠を含む)の非課税枠を最大限に活用するための具体的な戦略とヒントについて解説いたします。既に投資経験があり、基本的な知識をお持ちの40代〜50代の読者の皆様が、ご自身の状況に照らし合わせて実践的な一歩を踏み出すための情報を提供できれば幸いです。

企業型DC加入者が直面するiDeCo拠出の制約

企業型DCに加入している場合、iDeCoに加入できるかどうか、また加入できた場合の月々の拠出限度額は、お勤め先の企業型DC規約によって異なります。この点を正確に把握することが、非課税枠活用戦略の出発点となります。

主なケースは以下の通りです。

  1. マッチング拠出を導入している企業型DCの加入者:

    • 規約でiDeCoへの加入が認められている場合、iDeCoの月々の拠出限度額は1.2万円となります。
    • ただし、企業型DC規約でiDeCoへの加入が認められていない場合や、マッチング拠出を利用している場合はiDeCoに加入できません。
  2. マッチング拠出を導入していない企業型DCの加入者(DB等がない場合):

    • 規約でiDeCoへの加入が認められている場合、iDeCoの月々の拠出限度額は2万円となります。
  3. 企業型DCと確定給付型年金(DB)等の両方に加入している場合:

    • 規約でiDeCoへの加入が認められている場合、iDeCoの月々の拠出限度額は1.2万円となります。

(注:上記の限度額は2024年現在の制度に基づきます。将来的な制度改正により変更される可能性があります。また、お勤め先の規約によってiDeCoへの加入自体が認められていない場合もありますので、必ずご自身の企業型DC規約をご確認ください。)

このように、企業型DC加入者はiDeCoの拠出限度額が、非加入者の月5.1万円と比較して大きく制限されることが一般的です。しかし、この制約があるからこそ、iDeCo以外の非課税枠であるつみたてNISA(新NISA)の重要性が高まります。

企業型DCとiDeCo・つみたてNISA(新NISA)を組み合わせる戦略

企業型DC加入者が非課税枠を最大限に活用するためには、企業型DC、iDeCo、そしてつみたてNISA(新NISA)という複数の制度を全体で捉え、それぞれの特性とご自身の状況を踏まえた戦略的な組み合わせが必要です。

戦略1:iDeCoの税制メリットを最大限に活かす

iDeCoの拠出限度額が月に1.2万円または2万円と制限されていても、その税制優遇効果は非常に大きいです。iDeCoへの掛金は全額が所得控除の対象となるため、所得税と住民税が軽減されます。特に所得が高い方ほど、この所得控除による税負担軽減効果は大きくなります。

例えば、所得税率20%、住民税率10%の方がiDeCoに月1.2万円(年14.4万円)拠出した場合、年間で14.4万円 × (20% + 10%) = 43,200円の税負担軽減効果が得られます。これは投資のリターンとは別に確実に手に入るメリットです。

したがって、企業型DC加入者であっても、iDeCoへの加入が可能であれば、可能な範囲で満額近く拠出することを第一に検討すべきです。この所得控除のメリットは、つみたてNISAや新NISAにはないiDeCo独自の強力な利点だからです。

戦略2:iDeCoの拠出限度額が低い分をつみたてNISA(新NISA)で補う

iDeCoの拠出限度額に制約がある場合、その不足分を補うのがつみたてNISA(新NISA)です。新NISAでは、つみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)が併用可能で、生涯非課税投資枠は1,800万円まで拡大しました。

特に、iDeCoの月々1.2万円または2万円の拠出では、年間投資可能額は14.4万円または24万円にとどまります。非課税投資枠をより多く活用したい場合、年間120万円まで積立可能な新NISAのつみたて投資枠が極めて有効な選択肢となります。旧つみたてNISAを利用していた方も、新NISAのつみたて投資枠に移行し、より大きな非課税枠を活用できます。

iDeCoで所得控除のメリットを享受しつつ、つみたてNISA(新NISAつみたて投資枠)でより大きな金額を非課税で積立運用するというのが、企業型DC加入者にとっての基本的な非課税枠活用戦略の柱となります。

戦略3:企業型DC、iDeCo、つみたてNISA(新NISA)全体でのポートフォリオ構築

企業型DC、iDeCo、つみたてNISA(新NISA)は、それぞれが独立した制度ですが、ご自身の退職後の資産形成という観点からは、これらを一つのポートフォリオとして捉えることが重要です。

戦略4:資金配分の優先順位と具体的な資金捻出

企業型DCの掛金は給与から天引きされることが一般的ですが、iDeCoやつみたてNISA(新NISA)への拠出はご自身で資金を準備する必要があります。限られた資金の中で、どの制度に、いくら拠出するかという資金配分の優先順位を明確にすることが求められます。

一般的には、税制メリットの大きさを考慮すると、以下の優先順位が考えられます。

  1. 企業型DCの掛金: 事業主掛金は優先的に活用すべき非課税枠です。もし選択肢があれば、自身の拠出(マッチング拠出など)も検討価値があります。
  2. iDeCoの掛金: 所得控除のメリットが大きいため、iDeCo加入が可能であれば、可能な範囲で満額近く拠出することを優先します。
  3. つみたてNISA(新NISAつみたて投資枠): iDeCoの拠出限度額が低い場合や、より大きな非課税枠で積立投資を行いたい場合に優先します。年間120万円の積立は効果的です。
  4. 新NISA成長投資枠: 投信だけでなく、個別株やETFにも投資したい場合や、さらに大きな非課税投資枠を活用したい場合に検討します。年間240万円まで投資可能です。
  5. 特定口座など課税口座: 上記の非課税枠を使い切った上で、さらに投資を続ける場合に利用します。

この優先順位に従って資金を配分するためには、家計の見直しによる投資資金の捻出も不可欠です。具体的には、固定費(通信費、保険料、住居費など)や変動費(食費、交際費など)の見直しを通じて、毎月または年に一度、投資に回せる資金を確保します。ボーナスの一部を新NISAの成長投資枠や、つみたて投資枠の年間投資枠に充当するといった方法も有効です。

具体的なヒント:行動に移すために

まとめ:戦略的な組み合わせで非課税枠を使いこなす

企業型確定拠出年金に加入されている方も、iDeCoやつみたてNISA(新NISA)の非課税枠を戦略的に活用することで、非常に効率的な資産形成が可能です。iDeCoの所得控除メリットを最大限に活かしつつ、iDeCoの拠出限度額の制約はつみたてNISA(新NISA)で補うという基本的な考え方を持つことが重要です。

ご自身の企業型DC規約を確認することから始め、DC、iDeCo、つみたてNISA(新NISA)全体を一つのポートフォリオとして捉え、資金配分や運用商品の選択を最適化してください。本稿で解説した戦略とヒントが、皆様の非課税投資を最大限に活かすための一助となれば幸いです。