共働き夫婦必見!つみたてNISA・iDeCo非課税枠を世帯合算で使い切る戦略
夫婦で取り組む非課税投資の重要性
資産形成において、つみたてNISAやiDeCoといった非課税制度の活用は非常に有効です。特に共働きのご夫婦の場合、それぞれの非課税枠を活用することで、世帯全体としてより大きな金額を非課税で運用することが可能となります。これは、単独で運用するよりも、将来にわたって得られる運用益にかかる税負担を大幅に軽減し、効率的な資産増加に繋がる大きなメリットです。
世帯合算で非課税枠を「使い切る」ことを目標に据えることで、年間および運用期間全体での非課税メリットを最大化できます。本稿では、夫婦でつみたてNISA・iDeCoの非課税枠を最大限に活用するための具体的な戦略とヒントをご紹介いたします。
夫婦それぞれの非課税枠と制度の理解
夫婦で非課税投資に取り組む上で、まずはお二人それぞれのつみたてNISAとiDeCoの制度について、利用可能な枠や条件を正確に理解することが出発点です。
- つみたてNISA: 2023年までの制度では、年間40万円までを20年間非課税で投資できましたが、2024年からの新NISAでは「つみたて投資枠」として年間120万円、さらに「成長投資枠」と合わせて年間360万円、生涯で1800万円の非課税投資枠が設けられました。これは一人あたりの枠であり、ご夫婦それぞれがこの枠を持つことができます。つまり、新NISAではご夫婦で年間最大720万円、生涯で3600万円もの非課税投資枠を活用できる可能性が生まれています。
- iDeCo(個人型確定拠出年金): 働き方や加入している企業年金の状況によって、一人あたりの月額掛金の上限が異なります(自営業者等: 6.8万円、会社員で企業年金のない方: 2.3万円、企業型DCのみ加入の方: 2.0万円、DBのみ加入の方: 1.2万円など)。iDeCoの最大のメリットは、掛金全額が所得控除の対象となることです。これにより、所得税と住民税が軽減され、その分の税負担減を投資に回すことで、さらなる資産形成が期待できます。この所得控除も、ご夫婦それぞれの掛金に対して適用されます。
ご夫婦それぞれの収入や働き方を確認し、利用可能な非課税枠(特にiDeCoの月額上限)を把握することが、世帯戦略の第一歩となります。
世帯合算で非課税枠を「使い切る」意義
ご夫婦それぞれの非課税枠を合算し、年間で最大限に活用することを目指すことには、いくつかの重要な意義があります。
- 税メリットの最大化: つみたてNISA(新NISAのつみたて投資枠)の運用益非課税に加え、iDeCoの掛金所得控除と運用益非課税、そして将来の受け取り時の税制優遇を、世帯全体で享受できる最大の効果が得られます。特に所得控除は、所得が高い方がより大きな税軽減メリットを得られるため、ご夫婦で収入のバランスを考慮したiDeCo掛金の設定が重要になります。
- 複利効果の最大化: より多くの元本を非課税で長期間運用することにより、運用益が運用益を生む複利の効果を最大限に活かすことができます。非課税期間が長期にわたるほど、この効果は絶大になります。
- 将来に向けた柔軟性の確保: 世帯としてまとまった非課税資産を築くことで、将来のライフイベント(住宅購入、子供の教育費、リタイアメント資金など)に対する選択肢が増え、経済的な柔軟性が高まります。
具体的な世帯掛金設定戦略と資金配分
ご夫婦の収入状況や将来のライフプランに基づき、世帯全体で非課税枠を最大限に活用するための具体的な掛金設定戦略を検討します。
- iDeCoの掛金設定: ご夫婦のうち、所得税率が高い方のiDeCo掛金を優先的に満額近く設定することを検討します。所得税率が高いほど、同じ掛金額でも所得控除による税軽減メリットが大きくなるためです。ただし、iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、緊急資金とのバランスを考慮する必要があります。
- つみたてNISA(新NISAつみたて投資枠)の活用: iDeCoで資金がロックされる部分があることを踏まえ、つみたてNISAは比較的流動性の高い資産として位置づけ、ご夫婦それぞれの年間枠を計画的に積み立てていく戦略が考えられます。例えば、夫婦で年間240万円(120万円×2人)を積み立てる場合、毎月の掛金は世帯で20万円となります。ボーナス月での増額設定や、年間枠を使い切るための年途中からの開始も柔軟に行えます。
- 資金の優先順位付け: 手取り収入から、生活防衛資金の確保、iDeCo掛金、つみたてNISA掛金、その他の資産形成(特定口座、貯蓄など)の順で資金を配分することを検討します。非課税枠、特にiDeCoは税メリットが大きいため、優先度は高くなります。
- ボーナスや臨時収入の活用: 年間非課税枠を使い切るために、ボーナスからの拠出や、その他の臨時収入をつみたてNISAの増額設定や年一括投資に充てることも有効な手段です。計画的に年間枠を埋めることで、非課税期間を無駄なく活用できます。
夫婦間の情報共有と連携の重要性
非課税投資を世帯で効果的に進めるためには、ご夫婦間の密な情報共有と連携が不可欠です。
- 目標の共有: どのような目的のために非課税投資を行うのか(リタイアメント資金、住宅購入頭金、教育費など)、共通の目標を設定し、共有します。目標が明確であれば、運用方針や掛金設定の判断がしやすくなります。
- 運用状況の確認: 定期的に、ご夫婦それぞれのつみたてNISAやiDeCoの運用状況(評価額、含み益/損、ポートフォリオ内容)を確認し合います。これにより、世帯全体として資産がどのように推移しているかを把握できます。
- リスク許容度の確認と調整: 投資に対するリスク許容度は、ご夫婦それぞれ異なる場合があります。世帯全体として許容できるリスクレベルを話し合い、共有することで、無理のない運用を継続できます。ライフステージの変化に応じて、このリスク許容度を見直すことも重要です。
世帯ポートフォリオ構築とリスク管理
ご夫婦でそれぞれ運用する場合でも、世帯全体として一つのポートフォリオとして捉え、バランスを考慮した運用を行うことが望ましいです。
- 世帯全体でのアセットアロケーション: ご夫婦それぞれの口座で保有している資産クラス(株式、債券、不動産投信など)や地域(国内、先進国、新興国など)を合算し、世帯全体として目指すアセットアロケーションから大きく乖離していないかを確認します。
- 分散投資の徹底: 銘柄だけでなく、資産クラス、地域、時間(積立による時間分散)において、世帯全体でバランスの取れた分散投資を心がけます。これにより、特定のリスクに偏ることを避け、安定的なリターンを目指せます。
- 定期的なリバランス: 市場の変動により、世帯ポートフォリオのアセットアロケーションが目標とする配分から乖離した場合、定期的にリバランスを行います。非課税口座内での売買や、新規の積立資金の配分調整などにより、目標とする配分に戻します。
将来を見据えた出口戦略
非課税で積み上げた資産をどのように受け取るか、出口戦略も夫婦で共有し、計画を立てておくことが重要です。
- iDeCoの受け取り方法と税金: iDeCoの資産は、原則60歳以降に一時金、年金、またはその併用で受け取れます。一時金として受け取る場合は退職所得控除、年金として受け取る場合は公的年金等控除の対象となります。ご夫婦それぞれがiDeCo資産を持つ場合、受け取り時期や方法を調整することで、適用される税控除を最大限に活用できる可能性があります。
- つみたてNISA(新NISA)資産の取り崩し: 新NISAの資産は、非課税期間(無期限)内にいつでも売却して現金化できます。リタイアメント後の生活資金や、特定のライフイベント資金として計画的に取り崩す際、夫婦どちらの口座から、どのタイミングで引き出すのが世帯全体の税負担を抑える上で有利かを検討します。
- 他の資産との連携: 退職金や特定口座で運用している資産も含め、世帯全体の資産構成を踏まえた上で、非課税資産の取り崩し順序や方法を決定します。
まとめ:夫婦での戦略的な非課税投資の実現に向けて
共働きのご夫婦にとって、つみたてNISAとiDeCoの非課税枠を最大限に活用することは、世帯全体の資産形成を効率的に、そして強力に推進するための鍵となります。ご夫婦それぞれの制度を理解し、世帯合算での非課税枠「使い切り」を目標に、具体的な掛金設定、資金配分、そして情報共有と連携を行うことが重要です。
また、世帯全体でポートフォリオを構築し、リスク管理や定期的なリバランスを行いながら、長期的な視点で運用を継続してください。そして、将来のライフイベントやリタイアメントを見据え、計画的な出口戦略を夫婦で話し合っておくことも、非課税資産の価値を最大限に享受するために不可欠です。
本稿でご紹介した戦略とヒントが、ご夫婦での非課税投資に取り組み、より豊かな将来設計を実現するための一助となれば幸いです。